FC2ブログ

プロローグ

目に映るもの全てが物語っている。
ここでの偉業を。いや覇業と呼ぶべきでしょうか。

かつて全国にその名を馳せ、天に愛されそして天に見放された人物。

織田信長。

ある人は言った「うつけ者」と。
ある人は言った「異端者」と。

だが皆は言う。

「覇王」と。

そう呼ぶに相応しい功績を彼は後の世に残したのでした。

天正10年6月2日

あの事件さえ起きなければ、彼は天地人全てをその手に握っていたのかもしれません。

「夢幻の如くなり」

生前彼の好きであった敦盛が今にも聞こえてきそうなこの場所で、私はそんな思いを抱きながら黙祷していました。



~数ヶ月前 ジパング・堺~

私はジパングとゆう国の堺と呼ばれる街にいました。
世間では私みたいな仕事をしている人間を「冒険家」と呼んでいるらしい。

冒険家かぁ・・。そんな立派な者じゃないんですけどねぇ。

そう心の中で呟くと同時に私の脳裏には、あの日運命が大きく動き出すきっかけになった、あの港での出来事が思い出されました。

~1年前 海軍第2作戦本部・港前出港所~

あの大海戦から2年。
フリーの傭兵を辞めてどこか静かな街で長すぎる余生を静かに過ごそうと決めていた私に、傭兵時代にお世話になった軍の方からこんなお話を頂きました。

「さっき聞いたぜ。あんた今日で傭兵から足を洗うそうじゃないか。この後どうするつもりなんだい?」
「いえ。特に決めては。仲間の犠牲の上に成り立ち、両手を真っ赤に染め上げたお陰で一生食べて行くには不自由が無い程の給金は頂きましたから。」
「おいおい。そんなに皮肉たっぷりに卑屈になりさんな。それが戦争であり、おたくらはそれを糧にしていたんだろう?」
「否定はしません。ですから残りの人生はせめて彼らの心と共に静かに暮らそうと思います。」
「かぁ~それはもったいない。あんた程の腕前があれば引く手数多だろうに。戦争も、そして男も。」
「お話しはそれだけですか?ではもうすぐ船が来ますので。」
手荷物を持って踵を返して歩き出そうとする私に、
「待った待った!そんな話しをしにきたんじゃねぇんだ。つい・・な。わりぃと思ってるよ。」
言葉とは裏腹にさして悪くもなさそうな顔で彼は軽く頭を下げた。
「もぅ。」
少し呆れもしましたが邪険にもできませんので、話しを続けることにしました。
「それで。いったい何の用事なんですか?」
わざと少し不機嫌そうな顔で私が尋ねると、彼なりに気を使ったのかどうか少し早めの口調で
「悪い話しじゃねぇんだ。あんたの操船技術を見込んで1つ頼みがある」と人の話しを全く聞いていなかったかのような口ぶりで切り出してきたので
「そういった事でしたらお断りします。先程申し上げた通り私はもう仕事で船には乗らないつもりですから。」と今度は完全に不機嫌な顔と口調で断ると
「まぁそう言うなって。本当に悪い話しじゃねぇんだ。 な。頼むこの通~り。話しだけでも聞いてくれないか。」と今度は先程よりもっと頭を下げ両手を突き出し私の前で手を合わせるものだから
「これだけはあなたの頼みでも聞けません。では失礼します。」
と、はっきり言ったのでした。
船には本当に感謝しています。船と仲間が私を育ててくれたのも事実です。
でももう乗れない。
甲板に立つと確かに聞こえる音。

大砲の音。
剣のぶつかり合う音。

そして死んで行った者の叫び声が。

私の中で戦争は今も続いている。
きっと永久に終わらない。
この音が止む事も無い。
だから決めたの。
もう乗らないって。
この音と一生暮らすって。
これ以上身も心も麻痺してしまわないうちにって。

大きな目元に少し涙を浮かべながらその場を後にするべく立ち去ろうとする私に、必死の決意を感じ取ったのか彼は
「これ以上は言わないさ。ただあんたはきっと帰ってくる。これは連絡先。話しはまたその時にでも。」
そう言って折りたたんだ紙切れを私のバックに押し込むのでした。
よもやその紙切れ1枚がこの後の私の人生を大きく変える事になろうとは、この時の私には到底想像もつかない事でした。

「まもなく船が出港いたします。ご乗船の方はお急ぎ願います。」
係員が拡声器の音量を最大にし、ハウリングの音と交じり合いながら懸命に乗船を促す傍らで
「さようなら」
そう呟いた私はそれから1度も振り返る事なく、ただ静かに定期船に向かって歩き出したのでした。

~3ヵ月後 フローニンゲン~

「おはよ~睡蓮。もうここの暮らしにもなれたかしら?」
「おはようジェゼ。おかげさまで。あなたの笑顔と特製カプチーノのおかげかしらね。」
教会に向かう途中にあるカフェの前で、エプロン姿の愛らしい女性店員はいつものように挨拶をくれたのでした。
「エヘヘ。ありがと。ところで今日もまた教会?あなたよっぽど信心深いのね。」
「そんなのじゃないわ。ただあそこにいくと心が落ち着くから。他にやる事も特に無いしね。」
「ふぅ~ん、そんなものかしらねぇ。私なんて賛美歌聴いてるだけで眠たくなっちゃうのに~。感心しちゃうわ。」
彼女は何かを納得したかのように無邪気な顔でフムフムと頷くと今度は私の方を向いて
「いってらっしゃい。」
とこれまたいつもと変わらない明るい声で私を送り出すのでした。

この街に越してから3ヶ月。
故郷のあるアムステルダムからほどなく近いこの街で私は生活を始めていました。
朝は教会へ礼拝に。日中は主に家事の傍ら本を読み、夜はすっかり習慣になってしまった毎日のトレーニングをした後、亡くしてしまった彼らの冥福を祈り就寝。変わらない毎日。
ここには酒瓶を片手に勝手に部屋に入って来て泣きながら1人で喋る者も、寝ぼけてるのか狙ってるのか枕を持参して布団に潜り込もうとする不届きな者も、ましてや夜間戦闘を告げるサイレンの音も聞こえない静かな日常。
私自身が望んだ日常。
今日も時計の針はゆっくりと時を刻むのでした。

そんなある日の朝、今日は月に1度の買出しの為にお隣の大都市アムステルダムに向かう馬車の中にいました。
毎日の暮らしには不自由は感じないものの、やっぱり書物などの品揃えはフローでは寂しく、大きな書庫のあるアムスに頼るほかありませんでした。
アムスに着くと早速書庫に行き、およそ1か月分の書物を依頼すると準備にしばらく時間が掛かるとの事なので仕方なく広場の方へ。
「管理人が替わったみたいね。まっ仕方ないか。お金も下ろしたいし、ついでに広場にお花でも見に行こうかな。」
そう思いながら広場の方へ向かって歩いて行くと、近づくに連れ段々とざわめきと大きな声が聞こえてきました。
「お~い誰か空を飛ぶリスの調査に行かないか~~?」
「ジンの大口依頼だ。60日でポルトベロのマスターまで運べるなら誰でもいいぜ。」
「ダブリンの山賊に賞金が掛かったぞぉ。腕自慢は行ってみたらどうだい?」
広場では今日もギルド所属の仲介人が、方々から送られてくる山積みにされた依頼の中から、この街に来る航海者の方に仕事を斡旋するので大賑わいになっています。
近くに各ギルドの建物もあるのですが、広場の前の出港所からほどなく近いせいなのか、また街の銀行から近いせいなのか、こちらの方が航海者さんがよく集まるようでした。

私はそんな航海者さん達を横目に本のお金をお支払いするのに銀行へ。
「ご利用ありがとうございました。またのお越しを。」
約1か月分の生活費と本の代金を引き出した後また広場の方に戻ろうとすると、銀行脇の人気の少ない場所で机に自分の顔よりも大きな水晶玉を置いた老婆が座っていました。目が見えないのか、はたまた眠っているだけなのか老婆は目を閉じたままじっと俯いています。
普段の私ならさして気に留める訳でもなくその場を後にしたのでしょうが、なぜか今日は先月には確かにいなかったはずのその老婆が気になって、起こすのも申し訳ないと思いながらも向こうも商売だから良いよね。と心に言い聞かせお声を掛けてみました。
「すみません。何を占って頂けるのですか?」
聞き取りやすいようにわざとゆっくりした口調で話し掛けると、その老婆は目を閉じたまま皺の深い顔をゆっくりと私に向け、
「これは声の綺麗なお嬢さんじゃねぇ。そちらにお座り。お好きな事を占ってみましょうぞ。」
そう勧められたので私は目の前にある小さな古い木でできた椅子に腰掛けると、老婆はゆっくりと小さな目を開けて大きな水晶玉を覗き込むのでした。
「そうねぇ。何を占ってもらおうかな・・・。」
特に決めていた訳でもなかったので「う~ん」と小首を傾げながらちょっと考えていると、突然目の前の老婆の顔が先程までの優しそうな表情から再び瞼を閉じ悲しみの表情に。そして頬には一筋の涙が。
「おまえさん。相当辛かっただろうねぇ。」
か細きながらもはっきりと私にだけは聞き取れる声で、そう老婆は言いながら再び細い目を開け水晶玉の方を見ると、
「だけどこのままじゃぁいけんよ。おまえさんはそれを乗り越え前に進まなきゃならん。亡くしていった者達もそう望んでおる。そしてそうするだけの力が、おまえさんの中には眠っている。」
「それは・・・・」言い終わらないうちに老婆はまた、
「おおお。だけどこの力はもしや・・。ふぅ~む。さて、神は何をお考えでおるんじゃろう・・。」
先程の悲しい表情から今度は難しい顔つきで独り言とも取れるような話し方でそう呟くのでした。
私は言いかけた言葉をそっと飲み込みお礼を置いてその場を立ち去ろうとすると、
「まちんしゃい。おまえさんも気付いておるんじゃろう?こんな老婆に付き合ってくだすったお礼じゃ。これを持って総督官邸にいるルーベンスとゆう男に見せるとええ。」
そういって目の前に皮革でできた袋を取り出しました。
「ここから先はおまえさん次第じゃ。信じる道を進むが良い。例えどんな道になろうとも。お婆にできる事はここまでじゃて。」
そう言い放ち袋を目の前に差し出した老婆の目は、真っ直ぐに私を見つめていました。
「ありがとうございました。」
静かに席を立ち頭を下げると、私は老婆から皮革の袋を受け取りバッグにしまうとその場を去りました。
「水晶ではあれ以上私も見えん。人が見てはならぬのか・・。」老婆の最後の言葉が届いたかどうか。
そして老婆の視界から私が見えなくなるくらい離れると、先程受け取った袋をバックから取り出し目の前にぶら下げ、
「全部お見通し・・・・か。」
声になるかならないかくらい小さな声でポツリと漏らすと、再び袋をバッグにしまい書庫と反対方面に向かって歩いて行くのでした。総督官邸に向かって。

総督官邸前。ここに先程老婆から聞いたルーベンスさんがいるはず。
ただここは政府要人の集まる場所。当然のことながら門の前には屈強の衛兵が、周囲警戒を怠る事なく職務を全うされていました。
「う~ん。どうしたものかしらねぇ。」
袋こそ貰ったものの、議会への入室許可など当然貰ってるはずもなく、ましてや普段着ではないにしろドレスアップをして着飾っているわけでもないので、どうやって中に入ろうか考えた挙句結局、
「しょうがない。あんまり言いたくはないけど。」
言葉とは裏腹にさして困った様子でもなくそう言い終わると、私は衛兵の方に向かって堂々と歩いていきました。
すると周囲に鋭い眼光を送っていた衛兵が私に気付き、
「おいお前。ここは総督官邸である。許可の無い者は立ち入りできん。早々に去るがよい。」
その巨体にあった大きな声で私に向かって威嚇するかのように言い放ちました。視線は一時も外さず。
私もそれに応え衛兵から一瞬も目を離さずにいつもの調子で、
「元カリブ方面海軍第2作戦本部・第七傭兵部隊所属睡蓮です。ルーベンス様にお目通りをお願いします。」
そう言うと彼は明らかに見下した様子で
「はぁ?傭兵?おたくが?たとえそうだとしても傭兵風情がルーベンス様にお目通りなど叶う筈もないであろう。時間の無駄だ。これ以上何か言えば女であっても国賊とみなし容赦はせぬぞ。さあ立ち去れい」
と、取り付く暇も与えず彼はシッシッといったジェスチャーを私に向けるのでした。

そしてオーバーアクション気味のジェスチャーを行った為に一瞬目の前の女性から視線を離した。
その時。

目の前の空気が冷たくなった気がした。

衛兵は女性に視線を戻す。

何も変わってはいなかった。

しかし視線を戻した彼の表情が、恐怖によって歪み始める。
そして次第に脅えの表情に。

目の前にいる女性は先程から1mmも動いていない。
容姿も全く先程と変わらない。

何も変わっていないはずだが、確かに何か変わっている。

そして本能が気付く。

目の前の女性は全くの別人だ。

姿形ではない中身が。

「もう1度言いましょうか。」

目の前の姿形は全く同じの、ただし中身だけが別人に変わってしまった女性は、先程までの優しい声とこれも全く違う冷たい声で言い放ったのでした。彼の耳には死刑宣告に等しく聞こえたに違いないでしょう。
「ど・・・ぞ・・・・・。」
彼はあらん限りの力を振り絞ったがほとんど声にはならず、その場に座り込んだまま身動きが取れなくなってしまっていました。
そして彼女が悠然とその前を通り過ぎようとすると、まるで猛獣の近くでじっと息を殺している小動物のように、彼は小刻みに震えたまま目には涙をうっすら浮かべ、ただ通り過ぎるのを静かに待つのでした。
出来事にしてほんの数十秒。ただ彼にとっては無限とも取れる長い時間に感じられたことでしょう。
私は門の前まで来ると固まって震える衛兵の方を振り返り、
「ご苦労さまで~す」
と、最初に会った時の優しい声で楽しそうに言うとそのまま門の中に消えて行きました。
その姿をまばたきもできずにずっと見ていた衛兵は
「はは・・。生きてるのか俺。もう衛兵なんて辞めだ。あんなのが世の中にいるんじゃ何も守れる気がしねぇ。」
そう言うと彼は硬直して離れなくなった右手の槍を無理矢理引き剥がすと、その場で鎧も脱ぎ捨て、逃げるように立ち去ったのでした。

総督官邸に入ると外見とは打って変わって中は以外に狭く、シンプルな造りになっていました。
周りをさして気にするでもなく、そのまま真っ直ぐ歩いていくと2人の男性が並んでいました。
1人は恰幅のよいいかにも偉そうな感じのする男性。
そしてその傍らにはこれまたいかにも知識人といった細身の男性が1人。
私は探すのも面倒だったので、どうせ話すなら此方の方がと思い細身の男性に、
「こちらで人を探しています。ルーベンスさんとおっしゃる方なのですが?」
と尋ねると、彼は一瞬驚いた顔をしましたがすぐさま元の知性ある顔つきに戻り、
「ふむ。そなたが睡蓮か。ルーベンスは私だ。事情は聴いている。」
「あら。それでしたらお話が早くて助かりますわ。こちらをお渡しすればよろしいのかしら?」
と、目の前に先程老婆から頂いた皮革の袋を取り出すと、
「間違いは無いと思うが一応確認をしておこう。」
そう言って私から皮革の袋を受け取り、紐を解き中身を一瞥して
「ふむ。確かに。」
そう言い放つと続けて、
「しかし先程は少し驚いたぞ。「目」からそなたが来るほんの少し前に報告は受けておったが、まさかかような女性とは。女は魔物とはよくいったものだな。」
「随分ですこと。私は何もしていませんわ。」
と少しとぼけた様子で答えると、
「まあよい。確かに報告にもそうあった。そなたは立っていただけだと。ただ絶対に彼女の前に敵意を持って立ちたくはないとも言っておったがな。」
と、こちらは重い口調で答えるので、
「それはそれはルーベンス様は優秀な「目」をお持ちなようで。できればそうしてもらいたいものです。」
知らない者が聞いたら小娘風情がルーベンスに向かってそんな事を言おうものなら下手をすれば罪にもなりかねないような会話ですが、不思議と違和感が感じられないのは彼女が持つ雰囲気になせる技なのでしょうか。
そして数秒の沈黙の後、ルーベンスは私に向かい
「ここに来たとゆうことはよろしいんだな?」
と決意を尋ねてきたので
「構いません。やはり私にはこちらの世界で生きるしかないようです。」
私も決意を表に出すとはいかないまでも、そこはさすがに真っ直ぐ彼の目を見てそう答えます。
「よろしい。では睡蓮よ。そなたに特別周航許可を授けよう。これ1枚で全ての国や地域に立ち入ることが許される。」
かれは懐から3枚の用紙を取り出し私に手渡すと、
「それから残りの2枚のうち1枚は当座の活動資金の目録。そしてもう1枚は造船所の親方の所に持っていくがよい。そなたが乗る船を用意してくれるはずだ。」
「至れり尽くせりですわね。もうこうなる事が判っていたかのような用意の良さですこと。」
「どう思うかはそなたの勝手だ。ただ私はそなたがフローに来たと聞いた時から準備をさせておっただけだ。」
「こちらにもお見通しの方がいらっしゃったのね。はぁ~。そんなに私って判りやすいのかしら?」
「とぼけるでない。私と老婆以外でアムステルダムに住む人間には誰にも理解はできないであろう。ふむ。もしかすると先程の衛兵は少し理解ができるかもしれんがな。」
「もうその話しはおよしになってください。お嫁の貰い手がますますなくなります。」
「はは。それは問題ない。世の中は広い。せっかくだ。婿もついでに探してくればよかろう。」
「考えておきますわ。ではこれで失礼致します。」
一礼しその場を立ち去り扉に向かおうとする私に、
「そなたの活躍、楽しみにしているぞ。ネーデルランドの為。そしてそなたの為に。」
呟くような小声でそう言ってルーベンスは軽く笑みを浮かべると、次の瞬間にはまた元の知識人の表情に戻るのでした。

アムステルダム造船所はこの周辺の地域ではロンドンに並ぶ大きな造船所となっていて、昼夜を問わず様々な国や職業の方が引っ切り無しにやってきます。
私が造船所に到着する頃にはだいぶ日も傾きかけ、街は夕飯の準備に買い物に向かう主婦や、遊びを終えて帰宅する子供達などで少し慌しい様子でした。
しかしここ造船所ではそんな街の様子もお構いなしに、それはいつもの通り多くの船を求める人で溢れていました。
私は数人並ぶ造船所の人物の中から、1人出で立ちの違う年配の男性に先程の書類を手渡すと、彼は私の方をジロジロと眺め
「ふぅ~ん。人は見かけによらねぇもんだな。ま、わしの知ったことじゃないがな。」
そう言って振り返ると
「お~い。この姉ちゃんが例の船の主だそうだ。出港準備してやんな。」
大声で後ろにいる弟子と思われる方達にそう叫ぶと
「了解ですぜ親方。もう準備はできてますぜ。」
とこれまた親方に負けないくらい大きな声で返事が来るのでした。
「聞こえたな姉ちゃん。うちとこの連中は仕事が早くてありがてぇ。後は出港所役人の所にいってくんな。」
「ありがとうございます。助かります。」
そして早速役人の方に向かおうとする私に、
「気をつけるんだぜ。おめぇさんと違ってあいつはジャジャ馬だからよ。」
そう忠告してくれた親方に
「そうですか。それなら同じ者同士で気が合いそうですわ。」
と返したものだから、
「あっはっはっ。そりゃあおもしれぇ。帰って来たら土産話しの1つでも聞かせて貰おうじゃねぇの。たっぷり楽しめそうだ。」
「ご期待に沿いたいものですわね。」
そう言ってその場を後にしました。
しばらくして私の姿が見えなくなった頃、
「いやぁ~それにしても親方。可愛い人でしたねぇ~。俺付いてっちゃおうかなぁ~」
「ほんと。ほんと。あんな子が船長だったら船員冥利につきますってなもんですよね。なが~い航海で間違いなんかも起こっちゃったりして。ぐふふ。」
「ば~か。だからおめぇたちゃいつまで経ってもヒヨッ子なんだよ。俺だったら絶対にお断りだね。あんな人間と一緒に航海なんぞに出た日には命がいくつあっても足りゃしねぇ。ありゃあ相当の修羅場をくぐっていやがる。」
「ええっ。そうなんですか親方?人は見かけに寄らないってのは、あながち間違いじゃねぇんですね。」
「そうゆうこった。ささ。おめぇたち仕事仕事。まだまだ山ほど残っていやがるぜ。」
「へ~い」
そう言うとアムステルダム造船所はまたいつもの通りの活気を見せるのでした。

「お待ちしておりました睡蓮様。早速出港なさいますか?」
港前出港所に到着すると1人の役人がそう私に告げてきました。
「そうですね。もう船はこちらに?」
「ご用意させて頂いております。物資もクルーもご指示のあった通り積ませて頂きました。後はあなた様だけにございます。」
「ありがとうございます。でわ。」
「良い航海を」
深々と頭を下げ出港所役人は私を見送りました。

港にはいくつもの船が所狭しと停泊していましたがその中に1隻、黒い帆をマストに下げそしてその帆の中心には神話の中の動物とされる青いグリフォンが描かれた真新しいクリッパーが優雅に浮かんでいました。
「へぇ~。随分素敵な船をご用意してくれたのね。クリッパーか。これからの事を考えたらこれ以上無い船だわね。よろしくお願いするわね新しい相棒さん。」
そう言って夕日に映るクリッパーの姿をしばらく眺めた後
「さてさて。結局こうなっちゃったけどまずはどこに行こうかしらねぇ・・。」
と、ここにきて全ての準備が整ったとおもいきや、肝心の目的地が決まっていません。
「しょうがない。見るしかないようね。」
ボソリと呟いて私はバッグの中から1枚の紙切れを取り出しました。
そうそれは3ヶ月前、軍を辞めてカリブの定期船に乗り込む私にあの男が無理矢理押し込んだ物。
無造作に半分に折りたたまれたその紙を広げるとそこには
「リスボン酒場娘」
とだけ書かれていました。
「ふぅ。さ~て、じゃあここから初めてみましょうか。」

この時の私はジパングに行く事になるとは夢にも思わず、ただ久し振りの潮の香りに懐かしさを感じるだけなのでした。




~あとがき~

みなさんいかがでしたでしょうか?
SSが全く無い上にとんでもない長文になってしまったので、ほとんどの方が最後まで読まれないとは思いますけど・・・。

こちらに来てから20日程になりますが、良くも悪くも生活にすっかり慣れてしまい自分の時間が多く取れるようになった事と、通信環境がよくないのでDOLにまともにINできない事と、某愛の伝道師様のブログに触発されてしまった事などなど・・・。色んな事が重なって今回のブログを書くに至りました。

前回は大海戦ネタだったので今回はダンジョンにしようと思っています。って、まだ本人出港したところで終わっちゃいましたけど・・・。

なのでめげずに続きも鋭意構想中です・・・。

本当に自己満足の世界で書いていますので、私の些細な楽しみと思ってどうかご勘弁くださいませ<(_ _)>


             H23.5.13  睡蓮s










スポンサーサイト



テーマ : 大航海時代Online
ジャンル : オンラインゲーム

コメントの投稿

非公開コメント

No title

力作力作ヽ(´▽`)ノ
自分の書いた物とは比べ物にならないくらい考えられてますネ!
まぁ自分の方は考えずに書いてるので当然ですが(´・ω・`)
続き 楽しみにしています~(゚∀゚)

No title

゚*。(*゚ェ゚ノノ゙☆パチパチパチ
自分が楽しむ事が1番ですよね( *´艸`)クスクス
頑張る睡蓮sさん!ありがと♪

No title

(*^-^)ノこんにちわぁ♪
愛の伝道師ジッパさんのノベルのように、物語に引き込まれてしまいましたm(・ω・m)
すごく、続きが気になります(*ノωノ)

No title

いや、楽しい楽しい! 面白かったです~w^^

続き、期待してますね♪

No title

>ジッパさん
私も考えないで書いてますよ^^;
時間がかかってるだけですので^^;
ありがとうございます^^続きも頑張ってみます^^

>リュウ・ヒーさん
ヒーさんみたいなクオリチィは私には出来ませんし、せめて文章だけでもと思ったんです^^;
楽しむ事にはいつも全力投球でし♪

>エルザさん
ジッパさんほど文章も上手ではありませんし、構成もグダグダなのですが・・・。
続きで改善できるように頑張ります^^

>ファリーさん
楽しんで頂ければ幸いです<(_ _)>
続き・・・頑張りますv( ̄ー ̄)v

No title

すごい力作ですね~^-^*
見習わなくちゃ!
…いや、やっぱり無理です^-^;
マネできませんw

リンク貼らせていただきました♪
末永くよろしくお願いします~^-^*

pictlayer

プロフィール

睡蓮s

Author:睡蓮s
サーバー:Zephyros
所属商会:Medichi マルセイユ
     

睡蓮sカード


ちょっと押してみちゃう?

FC2カウンター
リンク
最新コメント
最新記事
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR